焼酎を主役に晩酌する際、お酒のアテにはどんな食べ物を選ぶことが多いだろうか。真っ先に思い浮かぶのは、塩辛や酢の物、刺し身といった和の食材かもしれない。チーズやクラッカーといった洋風のおつまみは、どちらかといえばワインなどの洋酒に合わせるイメージがある方も多いのでは。

しかし、実はチーズは焼酎との相性も抜群だと、和酒やチーズの専門家であるアサノノリエさんは語る。「チーズはワインだけではなく、焼酎や日本酒にも非常に合うんですよ。特に焼酎は自分の好みの温度や度数にアレンジして味わうことができますし、一度開封したあともしばらくは保存が効きます。チーズも同じく、種類によっては保存が効くので、どちらも常備しておいて家飲みのときに少しずつ楽しむにはぴったりです」とアサノさん。

家飲みの強い味方である焼酎とチーズ。今回は、意外にも思えるこの二者のペアリングのポイントをお聞きするとともに、三種類の壱岐焼酎に合わせるのにぴったりのチーズや副材料を紹介していただいた。

アサノノリエさん……神奈川県横浜市生まれ。にほんのもの応援社「和altz(わるつ)」代表。日本酒学講師として「日本酒ナビゲーター」「焼酎ナビゲーター」認定講座、日本伝統濁酒学講師として「日本伝統どぶろくナビゲーター」認定講座、飲料コンサルタントとして企業向け、飲食店向けのサービス講習などをおこなう。JSA認定ソムリエ、C.P.A.認定チーズプロフェッショナル、チーズ検定講師のほか、SSI認定酒匠、日本酒学講師、焼酎唎酒師、SSI研究室専属テイスターなど多数の資格を持つ。

 
──まずはアサノさんが焼酎をテイスティングする際、どのような点を見ているか教えてください。

焼酎に限らず、飲料をテイスティングする際に最初にチェックするのは、度数と甘みの確認です。焼酎は糖質が含まれないので基本的にはすべて辛口ですね。焼酎の場合、いちばんのポイントとなるのは原料由来の香りです。壱岐焼酎は米麹を使っているので、穏やかかつ爽やかな香りが特徴で、特に食事に合いやすいと思います。

──今回アサノさんには、玄海酒造の壱岐焼酎『イキボール』『壱岐島 あぶくまる』『壱岐スーパーゴールド22』の三種類を試飲していただきました。ご感想とともに、それぞれの焼酎に合わせたいチーズを提案いただけますか。

最初に『イキボール』から飲んでみました。まずは香りですが、とても爽やかで、ややハーブっぽさやフルーティーさも感じました。こちらはラベルを見ると“炭酸で割って楽しむ本格麦焼酎”というコンセプトだと思うのですが、ストレートでも気持ちよく飲めてしまうほどスッキリしていますね。焼酎と聞くと「癖がありそう」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、『イキボール』はいい意味でとてもライトなので、焼酎ビギナーさんでも飲みやすいと思います。

炭酸割りにすれば、一日の終わりに、ビールの代わりにぐびぐびと飲むのにも向いている焼酎ですね。ひとり飲みなら一杯目に、誰かと飲むなら乾杯のシーンに味わいたいところです。『イキボール』のようなスッキリとした焼酎に合わせるなら、カマンベールのような白カビチーズや、クリームチーズなどのフレッシュチーズがおすすめです。今回は『イキボール』のラベルのポップでかわいらしい雰囲気に合わせて、サーモンとチーズを香ばしいパンの上に載せたフィンガーフード風にしてみました。

 

──それぞれの食材を選んだポイントを教えてください。

まずはチーズですが、焼酎に使われている麹とチーズの白カビがどちらも菌ということもあって、焼酎に白カビチーズってお互いを思わせるニュアンスがあり、とても合うんですよ。甕熟成タイプは特に。白カビの部分のフレッシュマッシュルームのような香りもとても合う。家飲みの際は手軽に、カットされているカマンベールチーズをスーパーなどで買ってきて、少し焼いてもおいしいです。炭酸が弾ける食感に合わせてふわっとした口当たりのチーズを合わせてもいいですね。クリームチーズをムース仕立てにするか、リコッタチーズやマスカルポーネチーズなどをセレクトしてもいいと思います。

また、焼酎にパンを合わせるのはちょっと意外かもしれませんが、麦焼酎の麦の香りとパンの香ばしい香りはどちらも麦由来なので、相性抜群なんです。炭酸に合わせてカリッとした食感のドイツパンなどを合わせるとよりおいしいですし、もっと手軽に用意するならクラッカーでもいいですよ。サーモンや魚卵は北欧などではウォッカに合わせる定番なのですが、焼酎と一緒に食べると魚介特有の生臭さが気にならず、とてもよく合います。

──では続いて、『壱岐島 あぶくまる』。こちらは今年の十一月に発売されたばかりの新しい焼酎ですが、お飲みになってみていかがでしたか?

こちらも『イキボール』と同じく、香りがとても穏やかですね。ほのかにミネラルを感じるような爽やかさが特徴の焼酎だと思います。原料に少しタイ米が使われていることもあり、どこかエキゾチックな雰囲気も感じるので、エスニック料理と合わせてもおいしいだろうなと感じました。水で割ってお好みの度数にしたり、緑茶割りやさんぴん茶割りなどにすれば、食中酒として長い時間飲んでいても飲み疲れしない印象です。ニュートラルな味わいなので、カクテルベースとしてトニックウォーターやグレープフルーツジュースなどで割ってもいいと思います。

──こちらの焼酎にチーズや副材料を合わせるなら、何がおすすめでしょうか。

フルーティーで爽やかな印象の焼酎なので、共通の香りを持つマスカットを添えたブルーチーズが特に合うと思います。ブルーチーズは塩分と刺激が強いチーズなので、ちびちびと口にできるフルーツや甘口のワイン、あるいは蒸留酒と合わせるのが定番なんです。一緒にレーズン入りのライ麦のパンをわせてもいいですね。また、ブルーチーズと比べると少し手に入りづらいですが、シェーブルチーズなどもよく合います。シェーブルチーズはやや酸っぱくて爽やかな味わいが特徴なので、こういったフルーティーな焼酎はもちろん、フレッシュなフルーツやハーブとは相性がとてもいいんです。

──では最後に、『壱岐スーパーゴールド22』。こちらは壱岐焼酎をホワイトオーク樽に貯蔵し熟成させた本格焼酎ですが、お飲みになってみていかがでしたか?

実はこちらの焼酎は昔から大好きなんです。樫樽由来の香ばしい香りと、ほんの少しウイスキーを思わせるようなニュアンスもあって、食後にもう少しだけ飲みたいな……というときに、ストレートで贅沢に味わいたい焼酎ですよね。いまのような寒い季節には、お湯割りにしても合う一本だと思います。

私は『壱岐スーパーゴールド 22』にはぜひ、パルミジャーノレッジャーノなどの長期熟成されたチーズを合わせてほしいですね。

──ペアリングのポイントも教えてください。

私は飲み物と食事を合わせる際に、味わいはもちろんですが、サクッ、カリッといった食感の相性も重視します。パルミジャーノレッジャーノは、長期熟成すると旨味成分が固まってきて独特のジャリジャリとした食感になるのですが、おつまみにして食べるときはアーモンドナイフ(チーズナイフ)を使ってかち割りにするのが定番なんです。かち割りにすることでホロホロと崩れるような食感が楽しめますし、これにお湯割りを合わせると、口の中で香りが立って口溶けがとてもよくなります。

パルミジャーノレッジャーノはウイスキーと相性抜群のチーズですが、これはどちらも長期熟成されているから。フレッシュなワインにはフレッシュなチーズを合わせるのが定番であるように、熟成しているものには熟成しているもの同士を合わせるといいんですよ。副材料としては、香ばしさを引き立たせるナッツ類がおすすめです。

 
【今回の焼酎】
本記事でアサノさんに飲んでいただいた麦焼酎

・『イキボール』
・『壱岐島 あぶくまる』
『壱岐スーパーゴールド22』

【取材協力:Blauer Engel(ブラウアーエンゲル)】
・住所……東京都千代田区三番町18-19
・営業時間……月~金:17:30~23:00 (料理L.O. 21:30 ドリンクL.O. 22:00)
土:15:00~21:00 (料理L.O. 20:00 ドリンクL.O. 20:30)
・定休日……日、祝日

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